ここでは相続手続きの流れ概要説明と相続人の範囲と確定、相続財産の範囲、遺産分割協議の解説をします。
目次
相続手続きの流れ
人が亡くなった時、その財産(権利・義務・地位)について相続が発生します。
①亡くなられた方(被相続人)の死亡によって相続が開始します。
②どのように財産を分割するかについては、被相続人の意思表示である遺言書の有無によって変わってきます。
遺言書がある場合、原則は遺言書の内容にしたがって遺産分割しますが、相続人全員の合意があれば遺言書と異なる内容の遺産分割もできます。遺言書にない部分については遺産分割協議で分割を決定します。(902条1項)
遺言書がない場合は原則法定相続分(900条,901条)に従いますが、単純に分割できない財産もあり、また、分割方法も様々ありますので、遺産分割協議を行います。
③遺産分割協議は相続人全員参加が原則で、相続人が一人でも欠けた場合にはその遺産分割協議は無効となります。そのため、最初に相続人の調査を行います。
加えて、財産が何処にどれだけあるのか把握するため財産目録を作成します。
④遺産分割協議の参加者は相続人のほかに利害関係人として、遺言執行者、包括受遺者、未成年の特別代理人、後見人、不在者財産管理人、相続分の譲受人が参加します。
⑤遺産分割協議では生前贈与や特別の寄与の有無等を総合考慮してなされますが、その内容について合意が取れた場合は協議成立として、遺産分割協議書を作成します。
⑥遺産分割協議の内容に不満があり合意がなかった場合には、家庭裁判所での調停・審判によって解決を図ります。
調停の成立、あるいは審判の結審によって遺産分割が決定します。
⑦遺言の執行、遺産分割協議の成立、あるいは調停・審判により、財産の分割、登記、名義変更等を行います。
⑧相続財産が高額である場合には、相続税が発生する場合もあります。その場合は相続税の申告をします。
相続人
遺産相続では、被相続人の財産が正当な相続人に適正に分割されなければなりません。そのためには、誰が相続の権利のある相続人であるか、また、相続する財産は何処にどれだけあるかを把握することは、争いのない遺産相続の前提条件となります。
相続人の範囲を誤り、正当な相続人を欠いたり相続人ではない者に遺産分割した遺産分割会議は無効となり、最初からやり直すことになります。
また、相続財産の範囲を誤り、相続財産ではない他人の財産が含まれていた場合は無効となることもあり得、また相続財産が一部除外されていた場合は再び分割の問題が起こります。
ここでは相続人の範囲、相続の意思表示、欠格・廃除、相続人の確定と、相続財産の範囲、その評価方法について解説していきます。
相続人の範囲
相続人の範囲は、親族である6親等以内の血族と、3親等以内の姻族、および配偶者のうちで、相続順位と範囲があります。(親族の範囲 725条,相続人の範囲 887条1項,889条1項1号,889条1項2号,890条)
配偶者は常に相続人に入ります。
配偶者以外の親族での相続の順位は
第一順位:子(実子、養子、前妻(夫)との子、内縁妻(夫)との子の区別はありません)
子死亡の時はその子孫
第二順位:第一順位の子がいないとき
⇒直系尊属
第三順位:第一順位の子、第二順位の直系尊属が共にいないとき
⇒兄弟姉妹
行政書士等は依頼のある前にヒアリングでわかる範囲の相続人を確認しますが、受任後は戸籍等を調査して相続人を確定します。
相続の承認と放棄
相続を知ってから相続するか、しないかの意思表示をしなければならない期間があります。
民法条文では「相続人は自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に、相続について、単純もしくは限定の承認または放棄をしなければならない。」
この3か月の期間を熟慮期間といいます。相続は財産の取得とともに債務の負担を伴うので、これを承認するか、放棄するかは相続人の自由です。相続人は相続財産を調査して、単純承認するか、限定承認するか、相続放棄するかを考えることができます。熟慮期間中でも一旦承認・放棄がなされると、撤回することはできません。
承認の種類については
単純承認
被相続人の権利義務を無限に継承します。権利も債務も地位も継承します。
承認の方法は、単純承認の意思表示あるいは、相続財産を処分した・限定承認も相続放棄もせず熟慮期間を過ぎたときに単純承認になります。
単純承認の効果は、遺産と相続人の固有財産は一体となります。
限定承認
相続財産の限度で債務を弁済するものです。
相続財産が債務と債権のどちらが多いのかわからない場合に行われます。
承認の方法は、共同相続人全員が共同で財産目録を作成し、家庭裁判所へ提出して限定承認することを申述します。共同相続人の一人でも欠けると限定承認することができません。
限定承認の効果は、遺産と相続人の財産との独立性が維持される点です。よって、相続人の財産が債務に充てられることはありません。
相続放棄
相続人が相続の効果を全面的に拒否します。
相続放棄の方法は、相続開始後に家庭裁判所へ申述します。相続開始前はできません。
相続放棄の効果は、放棄者は相続開始当初から相続人ではなかったものとみなされます。放棄者の子孫も相続とは無関係になりなります。
熟慮期間の起算点
誰に何があった時から3か月なのか
相続人がいる場合
被相続人の死亡の事実と自分が相続人となったことがわかったとき。
相続人が複数いる場合
相続人ごとに起算点を定めて、それぞれ独立して進行します。
他の共同相続人の熟慮期間が経過しない場合であっても自分の熟慮期間が経過した場合は相続放棄等をすることはできません。
相続人が未成年者や成年被後見人であった場合
法定代理人(親権者や成年後見人など)が知ったとき。
相続人が承認や放棄をしないまま死亡した場合
その死亡した相続人の相続人(配偶者や子など)が知ったとき。
先順位の相続人が全ていなくなった場合
例.
被相続人の第一順位の子のすべてが相続放棄をした場合
次の第二順位の直系尊属は
「被相続人の死亡の事実と自分が相続人となったことがわかったとき」から3か月以内にどうするかを決定します。
第二順位の直系尊属がすべて相続放棄した場合は次の第三順位の兄弟姉妹も同じようにします。
相続の放棄・相続欠格・相続の廃除の違いについて
相続放棄
相続人が相続をしたくない、放棄する旨の意思表示
家庭裁判所への申述により成立します。
放棄の期間は自己のために相続の開始を知った時から3か月以内です。
放棄者は相続当初から相続人ではなかったものとみなされ、その子孫も同様です。
相続欠格
相続人の相続に関する不正行為が原因の相続権剝奪
家庭裁判所の手続きは不要で、不正行為の事由があれば欠格となります。
不正行為の事由
①被相続人・相続人を殺害し、または殺害しようとして刑に処された者
②殺害されたことを知りながら告訴しなかった者
③詐欺強迫により遺言を妨害した者
④詐欺強迫により遺言をさせた者
⑤遺言書の偽造・変造・破棄・隠匿した者
欠格となる時期は被相続人の生前でも、死亡後でもあり得ます。
欠格の効果は当人のみで、その子孫には影響せず、当人が死亡の時は代襲相続されます。
相続の廃除
遺留分のある相続人(配偶者、直系尊属、直系卑属)が行った非行により被相続人がその者に相続させたくないという意思表示
非行の事由
①被相続人に対しての虐待
②重大な侮辱
③著しい非行
廃除手続きには被相続人の生前または遺言による意思表示と家庭裁判所での手続きが必要です。
廃除の効果は当人のみで、その子孫には影響せず、当人が死亡の時は代襲相続されます。
唯一戸籍に記載されます。
相続人の確定
親族の戸籍、住民票、遺言書、相続放棄申述受理証明書等の資料が揃ったところで、相続人を確定します。
相続放棄
家庭裁判所の相続放棄申述受理証明書があるとき
→その者を相続人から除外する
相続欠格
遺産分割協議時点で欠格事由該当か確認し、該当があるとき
→・その者を相続人から除外する
・死亡の場合は子が代襲相続する
相続廃除
①遺言記載があるとき
→・遺言執行者が家裁に廃除の請求をする
・その者を相続人から除外する
・死亡の場合は子が代襲相続する
②戸籍に記載があるとき
→・その者を相続人から除外する
・死亡の場合は子が代襲相続する
行方不明
生存は明らかだが調査を尽くしても住所が判明しないとき
→・該当人を不在者として手続きを進める
・家裁に財産管理人(不在者財産管理人)の選任を求め、遺産分割協議に同人を利害関係人として参加させる
生死不明
生存が不明であるとき
→失踪宣告の要件を満たしている場合
・利害関係人(失踪者の配偶者、法定相続人)は失踪宣告申し立て
・当該失踪宣告者の法定相続人を相続人として遺産分割協議する
未成年
共同相続人中に未成年者がいる
→原則、その未成年の法定代理人が遺産分割協議を行う
以下の場合は子の利益と親の利益が相反する利益背反行為として特別代理人を選任する
・親権者と未成年が共同相続人であり親権者が代理人となる場合
・親権者を同じくする複数の未成年相続人がいて、当該親権者がそれぞれの代理人となる場合
胎児がいる
相続人の中に出生前の胎児がいるとき
→相続については胎児は出生したものとみなされますが、出生前に遺産分割協議を行っても胎児が死産のときは適用されず、遺産分割協議は無効となってしまいます。
遺産分割協議は胎児の出生を待つべきです。
相続開始後の認知
相続開始後の認知によって相続人が現れた場合
→遺産分割前:相続人として遺産分割協議に参加
遺産分割後:相続人を一部除外して行われた遺産分割協議は原則無効ですが、認知に疑いや争いがあった場合は、無効にせず価額のみ支払いの請求ができる。
相続財産
相続財産の範囲につては、権利、債務、契約上の地位などがあります。それぞれ相続の対象、遺産分割協議の対象等に区分けしました。
分割協議の対象は物権や債権等の財産ですが、それ以外の債務、契約上の地位は相続人の相続分で負担することになります。財産目録を作成する際はその点も考慮して作成した方が良いでしょう。
物権・債権
物権
物権とは、物に対しての何かの権利に基づく権利、と物の占有の事実に基づく占有権があります。
(1) 物に対しての何かの権利に基づく権利
① 所有権など物を直接支配し処分・利用・収益する権利
② 地上権・地役権など他人の物ではあるが契約等によりそれを利用・収益できる権利
③ 抵当権や留置権など債務者が債務の保証について債権者に物を提供して責任を負う権利
(2) 物の占有の事実に基づく権利:占有権
所有権は基本的に自分の物を占有し続けているのであれば、その所有権は他人と争いになることはありません。
物権は相続の対象で、分割協議の対象でもあります。評価額が大きければ相続税の対象にもなります。
債権
債権とは特定人が他の特定人に対して一定の行為を請求できる権利です。
相続財産としては金銭に換算できる、一般金銭債権、預貯金債権、損害賠償請求権が対象になります。
一般金銭債権 (現金等)
法的には分割債権ですので、法定相続分で当然に分割されます。しかし実務上では、共同相続人全員の同意がある場合には、遺産分割対象とすることもできます。
預貯金債権
判例では、相続によって当然に相続分に応じて分割されるものではなく、遺産分割の対象としています。遺産分割協議が終わるまで共同相続人で準共有(所有権のない財産権の共有)状態にあって共同相続人単独では払い戻しすることはできません。
ただ、遺産分割協議が終わるまでの当面の生活費や葬儀費用に充てる等のお金を確保するために、債権額の1/3の金額に法定相続分の割合を乗じた額まで、金融機関の判断で150万円を限度に払い戻しができるようになりました。(平成30年度法改正)
損害賠償請求権
有体財産についての遺失利益は金銭債権であるのは疑いようがなく、相続の対象となります。
生命侵害の場合における遺失利益は判例で相続の対象であるとしています。
生命侵害の場合における慰謝料請求権についても判例で相続の対象となりました。
死亡保険金
原則として、被相続人の死亡を契機として死亡保険金受取人に発生する請求権であり相続の対象外ですが、特定の相続人を受取人に指定した場合に、他の相続人との間に著しい不公平が生じるようなときは特別受益として持ち戻しの対象となる、という判例があります。その判断には保険金の額、遺産の総額に対する割合、同居の有無、介護の状況、保険金受取人となった相続人と他の相続人の関係や生活の実態などさまざまな事情をもとに判断する必要があります。
また、受取人を単に「相続人」としていた場合には、相続の対象となり、遺産分割協議の対象になります。
相続税の対象となることには注意が必要です。
死亡退職金・遺族給付金
死亡退職金は受給者である遺族の生活の保障をするために給付されるもので、相続とは無関係になります。
相続税の対象となることには注意が必要です。
香典・葬儀費用、祭祀財産(墓)等
香典は慣習上、喪主・遺族に対する贈与にあたるもので、相続の対象とはなりません。
葬儀費用についても、相続財産に対する請求はできません。喪主負担の判例があります。(判例)
祭祀財産(墓等)は物権なのですが、慣習上祭祀を主催すべき者が承継するものであるため、相続の対象ではありません。
果実(不動産賃料債権等)
相続の開始の時までに発生していた賃料債権は可分債権として各共同相続人に承継されます。(判例)
相続開始の時から遺産分割までに発生する賃料債権は、各供応相続人の相続分に応じて取得します。(判例)
また、遺産分割後に生じた果実(賃料債権等)は遺産とは別であるという判例があります。
債務
被相続人から相続するものは、財産上の権利のほかに財産上の義務もあります。
金銭債務
金銭債務は遺産分割協議を経ることなく、各共同相続人の法定相続分に応じて負うことになります。
しかし実務上では、共同相続人全員の同意がある場合には、遺産分割対象とすることもできます。
保証債務
金銭債務の扱いと同様になります。
しかしながら、責任限度額と保証機関の定めのない保証契約の場合は相続性が否定される判例があります。
身元保証
身元保証債務は相続性が否定される判例があります。
ただし、すべての身元保証債務が被相続人の死亡によって相続性が否定されるわけではなく、被相続人の死亡に前に具体化していた損害賠償債務は通常の金銭債務と変わらないとして、相続の対象となった判例があります。
信用保証(根保証)
通常の保証債務は金額が明確であるため、金銭債務の扱いと同様になります。
極度額および期限の定めのない継続的信用保証債務の場合は、保証人の死亡後に発生した債務は相続しないという判決があります。反対解釈すると、極度額または期限の定めのある場合は、保証債務が相続する余地があります。
極度額が関係する保証は根保証です。個人の根保証については極度額を定めなければ効力が生じない(民法第465条第2項)とあるように極度額の定めがあります。
民法の個人の根保証契約の元本確定事由(465条の4第1項3号)では、主たる債権者又は保証人が死亡したときに債務の元本は確定する、とあり、個人の根保証契約の保証人の相続人は、元本が確定した債務を相続します。
契約上の地位
契約上の地位が相続によってどのようになるのかを解説します。
賃貸契約上の地位
(1) 貸主
・相続開始の時までに発生していた賃料債権は可分債権として各共同相続人に承継されます。(判例)
・相続開始から遺産分割までに発生する賃料債権は各共同相続人の相続分に応じて取得します。(判例)
(2) 借主
賃借人に相続人である同居人がいる場合は問題なく財産権として相続できるのですが、
賃借人に相続人ではない同居人がいる場合に問題となります。
・賃借人に相続人がいない場合、その同居人は借地借家法により保護されます。
・賃借人に相続人がいる場合、賃借権は相続人に帰属するとした上で、内縁の配偶者として同居人が相続人の賃借権を援用して賃貸人に対して居住する権利を主張できる、という判例があります。同居人と被相続人との関係、同居の態様等をケースごとに考えなければならないでしょう。
・公営住宅の場合は一身専属的権利として、使用権を承継しません。
ゴルフ会員権
会員権の形態と規則で変わってきます。
預託金制のゴルフ会員権では、相続の対象になるかどうか判例があり、会の会則に会員死亡の時と譲渡の時とで承認手続きの違いがあるが、相続と譲渡を区別する理由がないとして会の承認手続きによって会員の地位の相続を認めた判例があります。
無権代理人と本人の地位
地位で問題となる代表格が無権代理人に関するものです。
(1)無権代理人が相続
・本人の地位を単独相続
相続前にした本人の追認拒絶は有効
→無権代理人の責任(履行または損害賠償)となります
相続後の無権代理人の追認拒絶は信義則上許されない
→無権代理人の責任(履行または損害賠償)となります
・本人の地位を共同相続
他の共同相続人全員の追認がない限り、有効にならない
(2)本人が相続
無権代理人の地位を相続
本人が追認拒絶しても信義則上許されるが、無権代理人の責任(履行または損害賠償)を免れません。
(3)無権代理人と本人の地位双方を相続
例
本人の配偶者等が無権代理人の死亡により無権代理人の地位を共同相続後、本人の死亡により本人の地位を相続
無権代理人の地位を最初に相続している以上、追認を拒絶する余地はない
→無権代理人の責任(履行または損害賠償)を負うことなります
相続財産の評価
遺産分割において、相続人に分割された遺産を現実のお金に変換したときに、その金額が具体的相続分と等しくならなければなりません。
現金や預貯金は比較的容易に価値を求めることができますが、現金や預貯金以外の財産については、その客観的な価値が専門家以外ではわからないことが多いものです。
不動産
時価、公示価格、基準価格相続税路線価、固定資産税評価額等から評価をしますが、算定が難しい場合は不動産鑑定士に依頼することが必要になります。
株式
・上場株式の場合
分割時に最も近接した時点の取引価格または近接の言って機関の平均額でもって算定します。
・非上場株式の場合
相続税申告書記載の評価額とします。
現金・預貯金・債権
・回収確実な債権(弁済期到来等)
その金額を評価額とします。
・回収可能性が低い債権(期限条件付き等)
当事者の意見を聞き合理的に判断します。
※債権の存否、現在額に争いのあるものは対象財産から除外すべきです。
動産
・貴金属:その相場
・絵画・骨董品 :専門家の鑑定
・自動車等:中古車販売業者で査定
相続後の財産に変動があったときの扱い
相続直後から遺産分割協議の終結まで期間が長く、その間に様々な要因で財産が変動することがあります。
例
①財産の毀損、滅失、散逸等があった
②家賃収入があった、利息や手数料があった
③財産の保存のために修理・修繕費用が生じた
④公租・公課が発生した
⑤債務を弁済した
⑥①に関して代償財産(保険金)が生じた
これらの変動をどのように考えるかの考え方を説明します。
相続財産に含まれる、相続財産の費用に含まれる→遺産分割協議で解決できます。
逆に相続財産に含まれない、相続財産の費用に含まれない→民事訴訟手続きにより解決します。
①分割される相続財産は分割の時点で現存するものに限られます。
→分割の時点での価額を評価しなければなりません。
②の果実は相続財産とば別のもので相続人の共有財産です。
→相続財産とは別に相続分で分割することになります。
共同相続人全員の合意があれば遺産分割手続きで分割できることになります。
③は保存のための必要費用ですが、これは管理費用として相続財産の費用として認められます。
しかし、有益費の場合は判例も判断が分かれるのでケース毎に異なると考えます。
④公租公課でも、固定資産税については判例は分かれますが、相続税は相続財産の費用として認めない判例が多いようです。
⑤債務を相続人の一人が弁済した場合、その債務と弁済が正当なものと認められるときは相続財産の費用として認められる判例があります。
⑥の保険金は相続財産とは異なる代償財産ですが、共同相続人の全員の合意があれば遺産分割の対象とすることができる判例があります。
参加者
遺産分割協議の参加者は、相続権のある相続人ならびに相続人以外の利害関係人となります。
①相続人
②包括受遺者
法定相続人以外で、遺言により被相続人ンお遺産の全部または一部を受けた者
③相続分の譲受人
相続人の相続分財産を、契約により譲り受ける者
④遺言執行者
遺言の内容を実現するため、財産管理、遺言の執行に必要な行為をする権利義務のある者
遺言による指名、または、利害関係人の申し立てにより家庭裁判所から選任される
⑤未成年者の特別代理人
相続人に未成年者がいる場合に親権者との利益相反があるときに、家庭裁判所から任命されれる未成年者の代理人
⑥後見人、保佐人、補助人、任意後見人
相続人に制限行為能力者がいる場合のその保護者
⑦不在者財産管理人
相続人に行方不明者がいる場合に家庭裁判所から任命された、その行方不明者の財産管理人
※行政書士は相続人・財産の調査結果の報告等で参加することがありますが、分割に影響を与える発言や相続人の代理人として交渉することはできません。
協議が調わないときは
家庭裁判所における分割(調停もしくは審判)になります。
行政書士は紛争解決のための代理人となることができません。弁護士がその任を担うことになります。
手続きが完了するまでの期間はどのくらい?
相続の手続きは、相続人の調査・相続財産の調査と目録の作成、遺産分割協議、ほか各種手続きにはかなりの作業量があります。
すべてを完了するには、およそ数か月、時には年単位に及ぶ時間がかかる場合があります。
行政書士ができる手続きは?
行政書士が行うことのできる業務の範囲である、権利義務又は事実証明に関する書類の作成にあたるものや、紛争性のない部分の代理ができますが、紛争性のある業務である遺産分割協議に代理人として参加することはできません。
相続の一連の手続きの中で行政書士が行えるものは
①相続人の調査
②相続財産の調査・目録作成
③遺産分割協議での、相続人や相続財産に関する報告のために出席
④遺産分割協議が成立した場合の、遺産分割協議書の作成
⑤名義変更等の各種手続きの代理
になります。